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マルチプレックスパターンの表記と生成(3)

●パターンの分解と合成

 今回は、マルチプレックスを含むパターンを「ジャグリング可能な2つの数列を合成したもの」と捉え、この考えに基づいてパターンを生成する方法を紹介します。この方法を使うことができれば、試行錯誤によらずになかば自動的にマルチプレックスを含むパターンを作ることができます。
 まずは、このシリーズで何度もとりあげてきた[53]121から考えてみましょう。このパターンは、以下のように考えることができます。
  [53]121=5120+3001
つまり、[53]121は5120と3001を組み合わせたパターンと理解することができます。この5120と3001のいずれもジャグリング可能な数列であることを確認してください。
 このように、マルチプレックスを含む数列を「ジャグリング可能な2つの数列を合成したもの」と分析的に捉えるなら、反対に、「ジャグリング可能な2つの数列を合成することによってマルチプレックスを含むパターンを生成する」という総合的な考え方も可能になります。実際、このように理解すると、パターンを用意に作ることができます。

●合成できるパターンの条件

 それでは、その具体的な生成法を考えてみましょう。とりあえずは、マルチプレックスということにとらわれず、どのようなパターンであれば合成できるかを理解することが必要です。
 前回説明したように、マルチプレックスを含む数列が実現可能なものであるには、2を含んでいることが必要でした。2はボールを手中に保持しているだけなので、そこに他のボールが落下してきてもキャッチすることが可能なのでした。ですから、2を含むパターン、たとえば423や522は、合成の候補となります。
 同様に、0はボールを保持していないので、そこにボールが落ちてきても問題なくキャッチできます。すると、0を含むパターン、たとえば300や504なども合成の候補となります。
 このように、数列の合成は、2もしくは0を含む数列を2つ用意することによってなされます

●合成の方法

 たとえば、423と300を合成することを考えてみましょう。はじめに、この2つのパターンにおいて、ボールがそれぞれどのタイミングで落下するかを把握しておきます。まず423ですが、4は4拍後の2のところに、3は3拍後の3のところに落下します。2は次に4で投げられますが、保持したままなので考慮する必要がありません。したがって、このパターンでは2と3の拍でボールが落下してくることになるわけですが、これがわかるように、2と3に「'」をつけておきます。つまり、42'3'と書いておきます。同様に、300は、落下するボールとしては3だけを考えればよいので、その落下位置である3を3'として、3'00と書いておきます。42'3'は2拍目と3拍目、3'00は1拍目にボールが落下してくるので、これらのボールの落下位置が重ならないように重ねあわせます。この2つはこのまま合成することができます。すなわち、
  42'3'+3'00=[43']2'3'
というように、[43]23というパターンを生成することができます。
 もう一例、522と300を合成してみましょう。522の落下位置は522'、300の落下位置は3'00となりますので、
  522'+3'00=[53']22'
  522'+03'0=5[3'2]2'
というように、522と300からは2種類のパターンを生成できます。これらはまだ落下位置に余裕があるので、たとえばさらに2'01を組み合わせて、
  [53']22'+12'0=[53'1][22']2'
  5[3'2]2'+2'01=[52'][3'2][2'1]
といったパターンを生成することができます(もっとも、下のパターンはボールを両手に1つずつ余計にもったまま531をやっているだけですが)。

●網羅的な合成

 パターンの合成方法の説明は、以上です。実際にパターンを作るさいには、「これとこれを組み合わせると面白いのではないか」と直感的に合成するのも手ですが、あらかじめ2や0を含むパターンを網羅しておき、それらのすべての組み合わせを試していくほうがよいと思います。それほど手間のかかることではありません。
 今回は、周期3、ボール数1~3のパターンに限ってみましょう。この条件に当てはまる数列をすべて網羅しても、
  1ボール:300, 201
  2ボール:600, 501, 420, 330, 312
  3ボール:900, 801, 720, 630, 612, 603, 522, 504, 423
と16種類しかありません。ただ、さすがに16×16の表を書くこともできないので、ここでは、3ボールのパターンと300および420を合成したものの一覧を作っておきます。マルチプレックスにならないものも含まれていますが、すべて書くことにします。
300420
900930, 903[94]20, 942
801831[84]21
720[73]20, 723[72]24, 7[42]2
6306336[43]3
6126[31]2[64][21]2
603633[64]23
522[53]22, 5[32]2[54][22]2, [52]2[42]
504534[54]24
423[43]23[43][42]2

 以上で、マルチプレックスパターンの表記と生成シリーズは終わりです。パターンを生成するための小技など、もっと細かいこともいろいろあるのですが、とりあえずここまでで述べたことを理解し、利用していけば、マルチプレックスに限らず、ジャグリングのパターン一般に対する理解もおのずと進んでいくと思います。数列によるパターンの生成や表記は、できたからといってジャグリングがうまくなるというわけではありませんが、できれば練習の幅が広がり、ジャグリングの楽しみが増すと思います。覚えておいて損はありませんので、暇があれば数字をいろいろいじってみてはいかがでしょうか。

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マルチプレックスパターンの表記と生成(2)

 前回は、マルチプレックスを含む数列の読み方を説明しました。今回は、マルチプレックスを含む数列がジャグリング可能かどうかの判定法を説明し、またマルチプレックスを含むパターンの基本的な生成方法を紹介します。

●ジャグリング可能か否かの判定

 通常の数列でも、ジャグリング可能なものと不可能なものがありました。たとえば534はジャグリング可能ですが、533や543はふつうはジャグリング不可能とされます。
 これらがジャグリング不可能とされる理由は、533のようなパターンなら「数字の合計÷周期(=ボールの個数)が整数になっていないから」、543は「複数のボールが同時に落ちてくるから」と説明されることが多いようです(実際ぼくもふつうはそのように説明します)。ただ、マルチプレックスのことを考えると、ジャグリング可能/不可能の判断基準はもう少し根本的なものを用いるほうがよいです。ジャグリング可能かどうかの判断基準とは、「投げるべきボールを手中に確保できること」です。
 具体的に説明します。まず534から。上段に534を、下段にそれぞれの数字で投げたボールが落下してくる位置を記します。たとえば最初の5で投げたボールは、次には2周期目の4で投げられ、その次には4周期目の5で投げられ…となります。

...534534534534...
...435435435435...

この表からわかる通り、このパターンではすべての拍でボールを1つずつ投げる必要があり、かつすべての拍にボールが1つずつ落ちてきています。したがって、この数列は特定の個数(4つ)のボールだけで投げつづけることができます。
 それでは、533はどうでしょうか。ここからは、1周期分だけ書くことにします。何も落ちてこないところには、便宜的に0を書きました。

533
03[53]

これを見ると、投げるべき5のところにボールが落ちてきていないことがわかります。したがって、この数列は投げつづけることが不可能です(ただし、たとえば同時に落下する5と3は一方だけをキャッチし、5は床に落ちているボールを拾って投げるなどすれば、533に「見える」パターンをおこなうことはできます。もっとも、このパターンも、ドロップを高いスローと考えれば、たとえば933や537などとみなすことができます。リズムが一定であれば、あらゆるボールの移動は、いわゆる「ジャグリング可能」な数列で表すことができます)。
 さて、それではマルチプレックスを含む数列に移りましょう。例として、前回同様[53]121をとりあげます。ボールの落下タイミングは、以下のようになります。

[53]121
[21]513

これは、ボールを投げるべきすべてのところにボールが落下しています。したがって、このパターンは投げつづけることができます。
 それでは、投げつづけることができないパターンがどのようなものかを見てみましょう。上記の数列を少し変形して、5[31]21という数列を作ってみましょう。このパターンでのボールの落下位置は、以下のようになります。

5[31]21
[321]510

このパターンでは、1のところにボールが落ちてきません。さらに[31]のところで投げられるボールが1つしかありません。これでは、[31]も投げることはできません。当たり前のことではありますが、マルチプレックスをおこなう拍には、その拍で投げる個数のボールを保持できていなければならないわけです。これを理解しておけば、マルチプレックスを含む数列がジャグリング可能かどうかを判断できます。

●原理的には可能でも実現困難なパターン

 ただし、上記の条件を満たして原理的にはジャグリング可能でも、実際には難度が非常に高くてほとんど実現不可能なパターンもあります。次の数列を考えてみてください。

[43]445
[54]443

このパターンはジャグリング可能です。しかし、[43]を実現するには、同時に落ちてくる5と4の両方を片手でキャッチしなければいけません。これは至難の技です。こういったパターンは、理論的には可能でも、実際におこなうことは不可能に近いです。
 このように、理論的には可能であっても実際には実現困難なパターンも存在します。実現可能なものとそうでないものとの違いは、どこにあるのでしょうか。それは、「直前に2を含んでいるかどうか」で決まります。
 たとえば[53]121なら、マルチプレックスの[53]をおこなう2つのボールのうち、1つは(後ろの)1によって手中に入りますが、もう1つは2によってボールを手に保持したままの状態になっています。ボールを手にもったままであれば、2つ目のボールをキャッチすることはたいして難しくはありません。このように、マルチプレックスをおこなう拍のボールのうち、1つを除いたすべてが2によって保持されていればよいのです。

●判定法の具体例

 それでは、具体的に数列が実現可能かどうかを確認するプロセスを追っていきましょう。今回は、[54]24を例としてあげます。
 1.数列を書きます。1周期だけでよいです。

[54]24
   

 2.それぞれのボールがどこに落下してくるかを確認します。先頭から順番にいきますと、5は2つ目の4のところに落ちてきます(右端まで行ったら左端に戻ります)。

[54]24
5

 3.マルチプレックスの4は2のところに落ちます。

[54]24
45

 4.同様に、残りの2と4は以下のようになります。

[54]24
[42}45

 5.まず、マルチプレックスの拍に2つ必要ですが、それがきちんと確保されていますし、それ以外の拍にも1つずつボールが落下しているので、このパターンはジャグリング可能であると分かります。また、下段に[42]とあることから、マルチプレックススローは、4と2により手中に入ったボールでおこなうことが分かります。つまり、2つのボールが同時に落下してくることもありません。
 このように、マルチプレックスを含むパターンも、通常の数列がジャグリング可能かどうかを判定するのとほぼ同様の仕方で対処できます。

●マルチプレックスを含むパターンの生成

 ここまでの知識で、マルチプレックスを含むパターンのもっとも基本的な生成方法が理解できます。その方法は、通常のサイトスワップ生成法となんら変わるところはありません。その方法を、具体的にパターンを作りつつ紹介しましょう。
 1.周期を決定し、周期分の枠を上下二段作っておきます。今回は、周期6のパターンを作ることにします。

000000
000000

 2.マルチプレックスをおこなう拍を決めます。今回は、1拍目と4拍目にそれぞれ2個のマルチプレックスを入れることにします。

[00]00[00]00
[00]00[00]00

 3.マルチプレックスの2つ前の拍に、あらかじめ2を入れておきます。落下位置も同時に埋めます。

[00]20[00]20
[20]00[20]00

 4.あとは、通常のパターンを作るときと同様、落下位置が重ならないよう注意しつつ、空いたところに数字を埋めていきます

[54]21[43]23
[32]43[21]45

これで、マルチプレックスを含むパターンができあがりました。一応確認しておくと、この[54]21[43]23というパターンは、
  数字の合計=5+4+2+1+4+3+2+3=24
  周期=6
  ボールの個数=数字の合計÷周期=24÷6=4
のパターンです。
 ここまでのことができれば、マルチプレックスのパターンを表記し、生成するうえで、困ることはないと思います。

 次回は、2つのパターンを合成することによってマルチプレックスのパターンを生成する方法を紹介することにします。

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マルチプレックスパターンの表記と生成(1)

●マルチプレックスとは

 ひとつの手から複数のボールを同時に投げることを、マルチプレックス(スロー)と呼びます。ふつう、同じ個数を投げるとしても、マルチプレックスを用いるパターンのほうが、用いないパターンに比べてずっと難度が低くなります。たとえば、6ボールマルチカスケードを考えてみてください。これは、6個のボールを2個ずつの3組に分け、その3組がそれぞれ1つのボールであるかのように、3ボールカスケードの要領で投げるパターンです。このパターンはマルチプレックスの基本的な投げ方・取り方さえ習得していればすぐにできるようになるもので、6ボールファウンテンやハーフシャワーと比べるとはるかに容易です。
 マルチプレックスを含むパターンは、この容易さのために、あまり高くは評価されてきませんでした。しかし最近では、ウェスをはじめとする流行の先端をいくジャグラーたちがマルチプレックスを多用する複雑なパターンを頻繁に用いており、マルチプレックスへの関心が以前よりもずっと高くなってきているようです。
 さて、こうしたマルチプレックスのパターンも数字で表記・生成することができます。一般的なサイトスワップパターンは(5ボールくらいまでは)理論的に可能なものはほぼすべて実現されてしまっている一方で、マルチプレックスパターンには実現可能でも手をつけられていないものがたくさん残っています。珍しいパターンを作りたいのであれば、マルチプレックスの数字表記はぜひ理解するべきです。今回は表記方法を説明し、それから後日、マルチプレックスを含むパターンの生成方法を紹介したいと思います。

 なお、はじめは分からないところがあっても飛ばして、とりあえず「●数列の解読」のところで具体的な考え方を確認すると、その他のところも分かりやすくなるかと思います。

●[ ]の意味

 マルチプレックスの表記といっても、とくに大きく変わることはありません。新しい記号を一種類導入するだけです。その記号とは、[ ] というカッコです。
 このカッコの意味は、「中に書いてある数字のスローを一方の手から同時におこなう」というものです。
 たとえば[54]とあれば、片手に2つもったボールをそれぞれ5と4の軌道に投げわけるということで、[543]とあれば、片手に3つもったボールをそれぞれ5、4、3の軌道に投げわけるということです。
 [52]とあれば、2つもったボールのうち1つだけを投げることになります。[22]なら、ボールを2つとも手中に保持したままになります。
 また、シンクロのパターンなら、[4x4]のようにxを用いることもあります。この場合も同様に、1つを4x、もう1つを4の軌道で投げます。

●周期とボールの個数

 それでは、具体的なパターンをとりあげてみましょう。[53]121というパターンを見てみます。まず、ボールの個数を考えてみましょう。一般に、
  数字の合計÷周期=ボールの個数
という等式が成り立つのでしたが、マルチプレックスを含んでもこの等式は成立します。このパターンでは、
  数字の合計=5+3+1+2+1=12
となります。
 それでは、周期はいくつでしょうか?答えは、4です。[ ]内の数字はすべて同時に投げるのですから、中にいくつの数字があっても、1拍分の長さしかありません。このパターンには5つの数字が含まれていますが、[53]は1拍と数えるので、周期は4になります。
 そこで、このパターンは、
  ボールの個数=12÷4=3
となります。

●数列の解読

 それでは、数字を順に追って、[53]121がどのようなパターンなのかイメージ・実践してみましょう。初期状態として、右手に2つ、左手に1つボールをもっているとします。
 [53]121 まず、右手から[53]を投げます。つまり、1つは5、もう1つは3の軌道に投げわけます。
 [53]121 ついで、空になった右手に、左手のボールを素速く投げわたします。
 [53]121 左手からわたされたボールは、右手で保持したまま投げません。
 [53]121 最初に投げた2つのうち低いほう(3)が左手に落ちてくるので、それを右手に素速く投げわたします。すると、右手はボールを2つもっていることになり、1.のステップに戻ることができます。
 ボールの動きがイメージできたでしょうか。これは、3ボールのマルチシャワーです。

 以上の知識で、マルチプレックスを含む表記を読み解くことと、マルチプレックスのパターンを見て数列で表すことができるはずです。通常のパターンに比べて複雑になりがちなので、はじめは1つのパターンを理解するのにも多くの時間をかけなければならないかもしれません。しかし、慣れてくるにつれて、考えるスピードがしだいに速くなってくるはずです。
 次回は、マルチプレックスを含む数列がジャグリング可能なものかどうか判定することを通じて、一歩進んだ理解を目指します。

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関節ごとのスロー練習

★要点

・収斂したフォームは理想的なものでなければいけない
・理想的なフォームを探すには、普段とは違う投げ方を試みることが必要
・関節ごとに練習することで、動きの自由度を高める

●動画


0:00 手を重点的に使う3カスケード。
0:16 肘を重点的に使う3カスケード。
0:32 肩を重点的に使う3カスケード。
0:55 脇にリングをはさんでの3カスケード。肘の位置が大きく動かないことの確認ができる。
1:12 脇にリングをはさんでの5ボールピルエット。
1:30 脇にリングをはさんでの7カスケード。

●理想的なフォームを実感すること

 別の場所でもたびたび書いてきたことですが、ジャグリングの技術を向上させるには、繰り返し練習することで体の動きを特定のものへと収斂させていかなければいけません。しかし、その一方で、収斂した先のフォームが理想的なものでなければ、せっかくそのフォームを覚えても、あまり意味はありません。つまり、まずは理想的なフォームがどのようなものなのかを把握しておき、それに近づくように体の動きを収斂させていくことが効率的な方法ということになります。
 けれども、理想的な投げ方は、やりたい技や体格によって変わってくるでしょう。それに、たとえ理想的な動きが映像として理解できたとしても、その動きを実現するためにどのように意識をもてばよいのかは、自分で実際に試行錯誤を積み重ねなければ分からないものです。
 さて、理想的なフォームを実感として理解するためには、逆説的に聞こえるかもしれませんが、理想的でない様々の投げ方を試みて、フォームの自由度を高めることが有効です。普段やらないような投げ方を試みることで、特定の型に収斂したフォームを、いったん忘れてしまうわけです。ここでは、特定の関節だけを重点的に使う投げ方で練習することを紹介したいと思います。

●特定の関節に重点を置いたスロー

 ジャグリングに主に用いるのは、末端から順番に、手、肘、肩の3カ所です。とりあえずはこの3つのうちのいずれかのみを重点的に用いる投げ方を試してみるとよいでしょう。
 もちろん、体幹や脚など他の部位も、軌道のコントロールには大きく影響はしませんが、勢いの付加などの形でスローに少なからず影響します。こういった要素を必要以上に大きく参加させる練習も、さらに上を目指すためには有効かもしれません。
 この練習の意義は、それぞれの関節をより柔軟に使えるようになることにあります。たとえば、初心者のうちは肩関節の動きにたよって投げている人が多いですが、この投げ方のまま練習していても、肘関節を使う技術はなかなか向上しません。そうすると、ますます肩にたよった投げ方になり、理想的な投げ方からより遠ざかってしまう、ということになりかねません。このようにならないために、最初はかなり窮屈に感じるかもしれませんが、肘関節の動きによって投げる練習をして、肘をより柔軟に使えるようにすることが大事です。もちろん、反対に肘ばかりで投げる癖がある場合は、肩で投げる練習をすることが有効になります。

 さて、各練習法についてそれぞれ少しずつ注意点を述べておきます。
 まず、手のみを使う場合。もちろん厳密には、手首や指の動きだけでジャグリングを行うことは不可能です。スロー位置とキャッチ位置に差をつけるため、手以外の関節の動きを補助的に用いなければなりません。とりあえずは、脇をしっかり締めて肘を脇腹に固定し、ボールを指で押し上げるつもりで投げると、手への負荷の割合をより高くできると思います。手の動きだけではあまり力を発揮することはできませんので、ボールを高く投げようとすると、どうしても肘などの参加割合が高くなってしまいます。したがって、軌道は最初はできる限り低くするほうがよいです。
 肘関節のみを使う場合も、脇を締め、肘を脇腹に固定します。慣れないうちは、肩関節も使ってしまい、肘が前後に大きく動いてしまうかもしれません。肩を大きく使っていないことを確認するためには、動画でもやっているように、脇にリングなどをはさんでみるとよいです。この状態では、キャッチは困難になりますが、肘関節で投げることができていれば、スローは通常時とほとんど同じ感覚で投げることができるようになります。
 肩関節のみを使う場合は、逆に、肘関節を一定の角度のままで固定するよう心がけます。結果的に肘が大きく前後に動くことになりますので、肘の位置を動かすつもりで投げてもよいかもしれません。走るときに腕を振る感覚と近いです。

サイクル法

 この「サイクル法」という名前は自分で勝手に(さきほど)作ったものですので、もしかしたら他のスポーツなどでは同様の練習方法が違う名前で採用されているかもしれません。もっとも、名前はまったく重要ではないので、どういう理由でどのような練習方法を採用するのかということだけ理解していただければと思います。

●方法

 これは、2~5種類程度の技を、1回ずつ順番に繰り返し試行するという方法です。試行と試行のあいだは、カスケードなどの基本パターンでつなげてもよいですし、いったん回収してしまっても構いません。ポイントは、同じ技を繰り返し試行しないことです。
 1つの技は、あまり多くのキャッチ数をこなさないようにします。1技あたり、キャッチ数ではせいぜい50、時間では15秒程度で完結させるのがよいと思います。

●利点

 この方法の主な利点を紹介します。第一に、惰性による成功をなくせることです。同じ技でも、最初の数試行と、しばらく同じ技の練習をつづけてからの数試行では、後者のほうが成功率が高くなるのが普通です。一度成功して感覚をつかむと、成功する体の動きを再現することが容易になるからです。
 このような繰り返しによる惰性的な成功を重ねる練習も、理想的な動きを体得するためにはもちろん必要です。しかし、最初の試行で成功できないなら、その技に必要な何らかの要素がきちんと理解・実践できていないということになるでしょう。また、たとえば人前でパフォーマンスをする場合には、まさか成功率が高まるまで同じ技を何回も繰り返すわけにはいきません。
 そこで、惰性による成功を排して、試行ごとに頭をリセットした状態で望む練習も有効だと言えます。これを行うのは簡単で、試行の合間に違う種類の技をはさめばよいです。とくに、たとえばピルエットとバッククロスといったように、系統の違いが大きければ大きいほど、思考をリセットする効果が増します。
 第二の利点として、体の動かし方が望ましくないものに固定してしまうことを予防できることがあります。さきほど述べたのとは反対に、いくら練習しても成功率が全然上がらない、それどころか繰り返せば繰り返すほど成功しにくくなってしまうということもまた、よくあることです。こうした事態は、思考や体の動きが不適切なものに偏ったまま自動化してしまうことにより起こります。その状態では、練習をつづけることが逆効果になってしまいかねません。
 このようなときは、間違った方向に積み上げてしまったものをいったん崩してしまう必要があります。そのためにも、系統の異なる技を挟むことが有効です。試行ごとに違う技を行えば、悪い方向へ動きが固定されることを予防することができます
 以上のように、同じ技を繰り返し練習することは、体の動きを自動化することにつながり、そこに異なるパターンを挟むことは、自動化をいったんリセットすることになります。よい方向への自動化であれば歓迎すべきですが、自動化がうまくいっていないようであれば、早めに見切りをつけてリセットすることが大事です。
 ただし、確実にできるパターンをサイクルに入れる場合には、惰性や自動化をうまく上達に結びつけることもできます。これが第三の利点です。
 たとえば、3ボール1アップピルエットはほぼ確実に成功する状態で、3ボール3アップピルエットを練習するとします。このとき、たとえば「522→3ボール1アップピルエット→55500→3ボール3アップピルエット」というサイクルで試行すれば、1アップピルエットの動きを3アップピルエットの動きに応用できるかもしれません。
 とくに、挑戦を始めたばかりで成功したことがないか、あるいは成功率が極端に低い技の試行をするときには、直前に同様の系統で難度がより低い技を行いリハーサルすることで、惰性により成功を引き出しやすくなります。その一方で、挑戦中の技を繰り返さないことで、体の動きがよくない仕方で固定してしまうことを防ぐこともできます。望ましい惰性は残し、望ましくない惰性は排除するよう、サイクルを決めるわけです。

●サイクルの作り方

 具体的なサイクルの作り方を少し紹介してみます。
 1サイクルに1つは、系統の大きく異る技を入れるとよいでしょう。たとえば、オーバーヘッド、アンダーザレッグ、バッククロスといったボディスローは、他の技と系統を大きく異にするので、どのようなサイクルに含めても惰性をよく排することができます。ハイアップやピルエットのように視線の大きな移動を伴う技も、思考をリセットするのに向いています。
 惰性を利用したいのであれば、軌道の高さを揃えることが有効です。ボールの数を同じにすることにはこだわらず、必要があれば少ないボール数のパターンも採用してみましょう。3ボール3アップピルエットなら、先に紹介したもののほかにも、55000や50500でのピルエットを試してみるとよいと思います。
 サイクルに含める技の個数は、練習したい技にもよりますが、ぼく自身は1サイクルの成功率が5~6割になるくらいを目安にしています。1サイクルに、成功率7割の技を2つとか、8割の技を3つといった具合です。惰性を使う場合は別ですが、成功率が9割を超える技はあまり負担がなく、思考をリセットすることにつながらないので、ふつうサイクルには含めません。

キャッチ位置の高さ

★要点

・キャッチ位置を高くするとボールをコントロールできる距離・時間が長くなる
・キャッチ位置を高くするとキャッチのタイミングに余裕をつくれる

●キャッチ位置は高いほうがよい

 通常のジャグリングを行うとき、ボールがどのように動くかは、キャッチしてからスローするまでの手の動きによって決定されます。今回は、キャッチ位置の高さに注目して、それがボールの動きにどのように影響してくるのかを考えていきたいと思います。結論から言いますと、キャッチ位置は高いほうが望ましいです(もちろん、無理に高くするのは駄目ですが)。その理由を、これから説明していきます。

●キャッチ位置が高いとコントロールが楽になる

 まず、最初に書いたように、ボールをコントロールできるのはキャッチしてからスローするまでの時間に限られます。さて、ボールを投げるためには、手を上下に動かさねばなりません。投げ上げる軌道の高さが同じであれば、手の上下移動の幅も当然同じになります(厳密には指の使い方やスローのタイミングなどで多少は変わってくるでしょうが、おおむねほぼ同じ幅になるはずです)。
 この移動幅のうち、スローのタイミングは、当然一番下がった位置から最も上がった位置まで上昇する過程での、どこか一点になります。
 一方のキャッチのタイミングは、無理をすれば手を上げながらキャッチすることもできるでしょうが、それよりは手を下げながらキャッチするほうがずっと楽でしょう。そうすると、手が一番上がった位置から、一番下がった位置まで移動するあいだの、どこか一点でキャッチすることになります。
 いま、手が一番下がった位置とスローする位置との高さの差が、30cmあるとします。この条件で、手が一番下がった位置でボールをキャッチするとしましょう。そうすると、キャッチしたボールを次にスローするまでにコントロールできる手の上下移動の距離は、30cmということになります。
 一方、ボールをスローしたのと同じ高さでボールをキャッチするとします。そうすると、ボールをコントロールできる距離は、手を下げるときに30cm、上げるときに30cmで、合計60cmとなります。
 30cmと60cmでは、当然60cm使えるほうが、ボールのコントロールはずっと楽になります。それも、単純に2倍の距離を使えるというだけではありません。手は上げるときよりも下げるときのほうが、より自由に動かすことができます。手を上げるときには、どうしてもスローの軌道を考慮しつつ投げねばなりませんから、あまり手を大きく左右に振ることはできません。しかし、手を下げるときであれば、ボールの軌道には影響しませんから、望ましい位置まで手を一気に動かすことができます。当然、後者のほうが、スローに失敗してキャッチ位置がずれてしまった場合にも対処しやすくなります。
 さらに、キャッチ位置をスロー位置よりも10cm高くするとしましょう。そうすると、コントロールできる距離は70cmになります。こちらのほうが、60cmのときよりさらにコントロールの精度を高くできるでしょう。
 もちろん、ボールは1つだけでなく連続で投げつづけなければなりませんから、手の上下移動の幅はあまり大きくすることはできないでしょう。それでも、同じ幅だけ動かすのであれば、キャッチ位置はより高くしたほうがよいと言えます。

●キャッチ位置が高いとキャッチの精度が上がる

 また、キャッチ位置を高くすることには、コントロールの精度を高めること以外のメリットもあります。それは、キャッチ自体の精度を高めることです。
 キャッチ位置が高いということは、キャッチするタイミングが早いということです。キャッチは、直前までボールをよく見て、低い位置で行うほうがより確実だと思われるかもしれません。確かに、ボールを1つだけ扱うのなら、そうかもしれません。しかし、ジャグリングでは複数のボールを扱わねばなりません。1つのボールにより多くの注意を向けるということは、それ以外へのボールへの注意を減じるということです。これは避けなければいけません。
 キャッチ位置を高くすれば、すなわちキャッチのタイミングを早くすれば、次のボールへ注意を向ける時間をより長くとることができます。もちろん、次のボールも早くキャッチすれば、さらにその次のボールへ注意を向けることができるようになります。このように早め早めにボールを処理していけば、余裕をもってキャッチを行うことができます。また、ミスをして、あるボールの処理に余計に時間を費やしてしまっても、処理のタイミングを少し遅らせる(つまり、キャッチ位置を臨時に多少低くする)ことによって、ドロップを防げるかもしれません。ドロップを防いだら、またキャッチ位置を少しずつ上げていけばよいです。はじめからキャッチ位置が低いと、このような余裕をもつことができません。

 このような理由から、キャッチ位置は高いほうがよいと考えられます。手の動きが間に合わずにドロップしてしまうとか、ボールを同じ位置からスローすることができなくなってしまうといった場合には、キャッチ位置を高くする(あるいは、キャッチのタイミングを早くする)ように意識してみると、余裕のあるスローができるようになるかもしれません。ぜひ試してみてください。

弱点にあわせた練習の構成

★要点

・何ができていないのかが分かれば効率的な練習を構成しやすい
・弱点が分からないうちはいろいろな練習方法を試してみる

●何ができないのかを把握すること

 このブログの別のところですでに述べたことですが、「ジャグリングをすること」と「ジャグリングの練習をすること」は一致するとは限りません。ジャグリングをしていても、やり方によってはそれが技術の向上につながらないかもしれません。逆に、道具を投げていなくとも、考えたり人の動きを研究したりすることで、できないことができるようになるための手がかりをえられることもあります。
 さて、単にジャグリングをするだけでなく、上達するための練習をしたいのであれば、習得したい技を見定めた上で、それを習得するためには何が足りていないのかを把握することが大切です。自分に何ができないのかが分かっていれば、その弱点を克服するにはどうすればよいかを考えることができるからです。
 ここで言っている「何ができないのか」というのは、たとえば5カスケードができないといったような技単位のことではなくて、技を細かく分析した一つひとつの要素についてのことです。一つの技でも、リズムとか、軌道の高さ・幅とか、手の高さとか、視線の方向とか、その他もろもろの要素の組み合わせによって成立します。このうちどれができていないのかを把握するのが大事だということです。

●弱点に合わせて練習方法を変化させる

 初めのうちは、こうした要素の大部分ができていないわけですから、ただ単に投げているだけでも、何かしらできない要素の改善につながります。問題が生じるのは、ある程度上達してからのことです。しばらくはテンポよく上達していたのに、あるときからふと、同じように練習していても記録が伸びなくなってしまうという経験は、ほとんどの人がおもちではないでしょうか。
 このように伸び悩んでしまう原因の一つは、上達にあわせて練習方法を変化させることに失敗してしまうことにあるように思います。特定の方法でばかり練習した場合、その方法で向上する要素があるうちは効率よく上達できますが、それらの要素を全部習得してしまえば、とたんに効率が落ちることになります。最初にうまくいけばいくほど、途中で練習方法を変更することはためらわれるかもしれませんが、行き詰まったらとりあえず練習方法を見直すほうがよいでしょう。
 たとえば、ある技を習得したいとして、その技の理想的な軌道やリズムは理解できていて、しかしスローの精度が悪いとしましょう。この弱点を自覚することができていれば、改善策を考えることもできます。たとえば、通常よりも少し高いくらいの軌道でその技をこなす練習は有効です。高く投げるほうがコントロールは難しくなるので、通常の軌道で投げるよりは、高めの軌道で投げるほうが、負荷が高くなって技術を向上させやすくなるからです。
 しかし、もしスローの精度が悪いという弱点に気づいていないとしたら、この練習方法にたどり着けないかもしれません。たどり着けずに効率的でない方法を採用しつづけたなら、同じ技を習得するにもずっと多くの時間を費やさねばならなくなってしまうでしょう。そうならないために、練習方法を決定する前には、自分に何ができていないのか、何を練習するべきなのかを把握しておくことが大事です。
 とくに心に留めておいていただきたいのは、技の習得に近づけば近づくほど、個々の要素を意識した練習が必要になるということです。すでに述べたとおり、最初はできないことのほうが多いので、どんな練習方法をとろうが技術の向上につながります。その一方で、できる要素が増えれば増えるほど、できない要素を狙って練習することは困難になります。これに気づかずにただその技をひたすら繰り返しても、あと一歩というところで完成させられないまま行き詰まってしまうことになります。逆に、その要素を狙った練習さえできていれば、極端に言えばその技自体をこなさずにその技を完成させることもできるはずです。

●弱点を見つけるために練習方法を変化させる

 ただし、何ができていないのかに自分自身で気づくのは、たいへん難しいことです。実際には、技ができるようになって初めて何ができていなかったのかに気づくこともありますし、場合によっては、できるようになっても以前悪かった点が分からないということもあるでしょう。できないことができるようになるよう練習を構成することが理想ですが、現実にはつねにこれを実践することは無理だと思います。
 そこで、次善の策として、自分の弱点が自覚できていない段階では、できるだけ多様な練習方法をこなすことを勧めます。とくに、上達しているという実感がえられず行き詰まってしまった場合には、同じ技を練習するにしても、違う仕方でアプローチをしかけることで突破口を見つけられるかもしれません。
 たとえば軌道を高く/低くするとか、1投ずつ増やしてみるとか、足を動かさないように投げるとか、歩きながら投げるとか、ボールを減らすといった方法を試してみると、予想外に難しいと感じるものに出くわすと思います。それは有効な練習方法である可能性が高いです。
 また、道具の個数を増やしていくにしても、3ボールや4ボールのパターンをあらかじめいろいろ習得しておくほうが、かえって効率よく上達できるようになります。たとえばリバースカスケードやミルズメスを練習すると、スロー/キャッチのヴァリエーションが増えて、ボールの数を増やしたときにその動きを応用できるようになります。逆に、たとえば3ボールのパターンを増やしたい場合も、ボールの個数を増やす練習をすることでスロー/キャッチの精度を高めることができるようになるはずです。
 習得したい特定の技があるとしても、それができない技である以上、それができるようになるために何が必要かを把握することは、なかなかできることではありません。しかし、自分に何ができないのかを把握することはできます。そのできないことをできることに変えることで、習得したい技の向上につながるかもしれません。また、もしそれが習得したい技の向上には結びつかなかったとしても、できることが増えたのですから、無駄ではないはずです。「何ができるようになりたいか」と同じくらいに、「何ができていないのか」を意識して練習してみてはいかがでしょうか。
プロフィール

mascaret

Author:mascaret
福岡出身・東京&千葉&フランス経由、千葉在住のジャグラーです。

*経歴
JJF2014にて
 エンデュランス
  5ボールカスケード1位
  6ボールファウンテン1位
  7ボールカスケード1位
JJF2012にて
 チャンピオンシップ決勝進出(2年連続)
 エンデュランス
  5ボールカスケード1位
  6ボールファウンテン1位
  7ボールカスケード1位

*使用道具
ボール:RF Beanbag M (Rad Factor), Elite 8 M (Gballz) etc.
クラブ:PX3 SIRIUS TRAINING (Play)
リング:Absolute Circus Ring (Absolute Circus), Wind Stream Ring (Mr. Babache), SATURN (Play)

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