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エンデュランス(2): 持久力・集中力を高める

★要点
・体力の消耗の少ないフォームを探し、それを基本形とする。
・特定の部位の消耗を回復するために、基本形以外のフォームも適宜用いる
・集中力を持続させるため、パターンの維持に向ける意識は最小限にとどめ、気晴らしをする

 今回は、持久力・集中力があれば安定して投げ続けることのできるパターンのエンデュランスの記録を伸ばすことについて書きます。安定しているパターンであるという前提ですので、パターンの成立に関わる技術とはやや離れて、エンデュランス中にどのように持久力・集中力を維持し続けるかという点が話題となります。

●体力の消耗を軽減する

 安定しているパターンですのであまり不必要なエネルギーを使わずに投げることができているはずですが、長時間投げ続けるためには、消耗の少ない投げ方の中でもさらにできるだけ消耗の少ない投げ方を見つけることが大切です。そのためには、とくに次の2点に留意するとよいです。

○消耗の少ない基本形を見つける
 第1に、当たり前のことではありますが、脱力することが重要です。同じ部位を同じスピードで動かすのであっても、エネルギーを使わない動かし方があれば浪費する動かし方もあります。安定しているパターンであれば、意識的に脱力していくことは難しくないはずです。とくに競技会本番では緊張のために不必要に力を発揮してしまいがちですので、スタートの時点から脱力した投げ方を心がけます。
 また、ボールを投げるのに直接に参加する腕以外でも、脚や体幹といった体を支える部位が疲れると、エンデュランスの成績に影響が出てきます。ジャグリングに直接関わる部位以外もなおざりにせず、体全体に意識を向けて、不必要にエネルギーを消費していないか適宜確認しましょう。個人的には、普通にボールを投げてエンデュランスをしているときに最初に疲れを感じるのは首です。ですから、エンデュランスの時には、普通にジャグリングをするときと首の角度を変えています。具体的には、通常よりは首を立てて、上目に軌道を見るようにすることで、首の後ろの部分が疲れるのを防いでいます。
 両足は開きすぎていると疲れるでしょうが、閉じすぎているとバランスをとるのにエネルギーを使いますから、疲れにくい適当な足幅を見つけてください。背筋はできるだけ垂直にして、体幹の筋肉に余計な負担がかからないようにしましょう。体が前に傾いていると背中に、後ろに傾いていると腹に負荷がかかります。とくに腰が痛くなる場合は、体が前に傾いていないか確認してみてください。背をまっすぐにした上で、足の裏に意識を向けて、足先と踵の両方に均等に体重がかかるよう気をつけてみるとよいです。
 このようにして体力の消耗が少ないフォームを探し、それをエンデュランスの基本形とします。

○消耗を分散させる
 第2に、体力の消耗を分散させます。これは、脱力することと無関係ではありません。たとえば、スローに必要なエネルギーの90%を上腕の筋肉から、10%を肩の筋肉から捻出する投げ方と、50%を上腕から、50%を肩から捻出する投げ方とでは、後者のほうがより長時間の運動に耐える投げ方であるはずです。さらに後者よりは、40%を上腕から、40%を肩から、20%を胸からという投げ方のほうが、持久性の観点からは優れているでしょう。エンデュランスにおいては、体全体としての体力の消耗が同じであっても、特定の一部位の消耗がより大きい状態のほうが、スローの安定感が低くなりますし、集中力もより大きく削られてしまい、結果として記録が伸びなくなってしまいます。エンデュランス中には、特定の部位に負荷をかけすぎていないかどうか、時折考えてみることが大事です。
 ただし、消耗の分散は、基本形での各部位の消耗を分散させるということに限りません。どんなに優れたフォームであっても、そのフォームで投げ続けていれば、ある部位が他の部位より先に消耗してきてしまうはずです。こうした特定の部位の消耗を解消させるために、基本形以外のフォームを用いることも重要です。
 ある部位が疲れすぎていると思ったら、投げ方を変えて、疲労している部位の回復を図ります。そのためにも、同じパターンであってもいろいろな投げ方で安定して続けることができるようにしておくことが望ましいです。もっとも、いろいろな投げ方といっても、外見は全くと言っていいほど変わらず、投げている本人にしか自覚できないような微細な違いしかないことがほとんどでしょうが。
 さて、たとえば、ある人にとって理想的な基本形が、50%を上腕、40%を肩、10%を胸に頼るものだったとします。そうすると、最初に疲れるのはおそらく上腕でしょう。この場合、割合をそれぞれ30%、50%、20%のように変化させて、上腕の疲労軽減を図ります。もちろん、安定度は多少犠牲になります。
 具体的には、ぼくはエンデュランス中には主に2種類の投げ方を使い分けています。ひとつは基本形で、これは基本形ですのでこれといった特徴のない、ニュートラルな投げ方です。もうひとつは、基本形より軌道の頂点を10cmくらい下げ、脇をより締めて肘の位置の固定を強め、脚を心持ち踏ん張る投げ方です。それぞれの筋肉の参加量を表現するのは難しいのですが、基本形に比べると、腕および肩の筋肉の参加を多少軽減し、その代わり広背筋の参加を増やしています。軌道が低い分リスクは高いのですが、腕と肩は多少休めるので、疲れをとる目的で、時おりこの投げ方を使います。この2種類のほか、やや高い軌道で投げたりすることもありますが、主な投げ方としては、基本形とやや低い投げ方の2つです。
 スローにあまり直接に関わらない部位に関しては、ある程度自由に基本形から変化させて、できるだけ疲れを溜めないようにします。たとえば、ぼくはエンデュランス中によく足踏みをします。姿勢を変えずに直立し続けるのは疲れるものですので、適宜姿勢を崩して、疲労の蓄積を避けるためです。脚はジャグリングにはほとんど関係がありませんので、脚に意識を向けることにはあまり意味がありません。しかし、疲労が溜まると、どうしても意識せざるをえません。どの部位の疲労であっても、蓄積し、意識の大きな部分を占めるストレスとならないうちに、意識のわずかな部分を使って解消しておくべきです。
 このように、安定度が高く疲労も小さい投げ方を基本形とした上で、適宜そこから離れて特定の部位への疲労の集中を予防していきます。

●集中力を維持する

 体力に余裕があっても、集中力を欠くと不意のドロップの原因となります。目に見えないものだけに、どのように集中力を維持するかというのは難しい問題ですが、ここでは、ぼくがエンデュランス時に心がけていることをいくつか紹介します。
 なによりも大事なのは、上で述べたこととつながるのですが、筋肉の疲労を予防することです。疲れてしまうと、その疲れに気をとられてしまって、ジャグリングに集中することができません。体力を温存し心に余裕をもつことが、集中力の維持には不可欠です。
 体力に余裕があっても、もし集中力が散漫であれば、落とすはずのないところで落としてしまいかねません。安定しているパターンではあまり神経を張りつめていなくてもドロップすることはないのですが、不意のドロップを避けるために、ぼくはボールの落下位置の把握だけは確実にこなすようにしています。もう少し具体的に言うと、軌道の頂点より少し下あたりに意識を向けて、ボールが落下を始める瞬間を目で捉えるようにします。上昇する過程のボールは気にしません。理想の軌道から大きく外れてしまった場合は、普通は投げた瞬間にそのミスに気づくはずですので、そのときだけそのミスをしたボールの動きを丁寧に追うようにして、あとはただ落下してくるボールのことだけ考えます。
 さて、集中力が散漫であってはいけませんが、反対に、考えすぎても疲れたり飽きたりするのが早くなってしまいます。目の前のジャグリングのことしか頭にないと、ドロップしないだろうかとか、体力はもつだろうかとか、しなくてもよい心配をして、かえって体の動きがぎこちなくなり、つまらないミスをしてしまいがちです。
 よい記録を出すためには、適当に気晴らしをして、必要最低限の集中力を持続させるのが理想です。気晴らしのために、ぼくは音楽を聴いたり、人と話したりします。一人でエンデュランスをするのであれば、音楽を聴くのがちょうどよい気晴らしかと思います。競技会では、他に何人ぐらい残っているかといった情報を耳から入手したいので、音楽は聴きません。近くに知り合いがいればおしゃべりをしながら、リラックスしてジャグリングを続けます。周りに誰もいなければ、好きな音楽を頭の中で再生したり、昔読んだ小説のプロットを思い出したりと、単純で、時間がかかり、あまり疲れすぎないことに頭を使うようにしています。
 気晴らしは、競技会本番の緊張を緩和するためにも有効です。落としてはいけないというプレッシャーが大きいほど、普段の動きから遠ざかってしまうものです。こうしたプレッシャーを回避し、練習時の動きを再現するためにも、あえて思考をエンデュランスのことからある程度切り離すことが有効です。

●持久力を高める

 以上で述べてきたことは、パターンの成立自体には関わらないにせよ、基本的には、個々の試行にさいして心がける技術的なことがらでした。最後に、エンデュランスの重要なもうひとつの面である、体作りについて少し書いておこうと思います。競技種目のパターンが安定しているのが自分一人であれば、単純に技術だけで勝つことができます。しかし、安定している人が複数いる場合は、持久力と集中力の勝負になります。
 ナンバーズに必要になるような強い筋肉を手に入れることは大変でしょうが、エンデュランスに関わる持久的な筋肉をつけることはそれほど苦労のいらないことです。少なくとも5ボールエンデュランスまでであれば、30分のエンデュランスを行うのに必要な体作りは女性でも難しくはないと思います(ただし、30分のエンデュランスを行う技術を習得するためには、その練習のために30分のエンデュランスに必要となるよりずっと多くの体力があったほうが望ましいですが)。なお、5ボールカスケードを5分間続けるよりは、腕立て伏せを10回するほうが疲れると思います。5分未満で限界を迎えてしまうのであれば、それは筋力・持久力の問題ではなく技術の問題だとみなして間違いありません。
 筋力トレーニングとしては、軽い負荷のアームカール(普通に立った状態で、肘の曲げ伸ばしによってダンベルを上げ下げする運動)がもっとも単純かつ確実でしょう。50-100回程度で限界となるくらいの重量のダンベルを用いて、50回を3-4セットこなします。
 最初は脇をしっかり締めて、上腕の筋肉(上腕筋・上腕二頭筋)だけ使うようにしますが、疲れてこれが難しくなったら、脇を緩めて肩の筋肉(三角筋)を使って上腕ごと動かしてかまいません。筋肉をつけるためのトレーニングではなく、持久力を高めるためのトレーニングなので、動きの厳格さには気をつける必要はありません。
 一般的なアームカールの動きでなくて、ジャグリング時の腕を回す動きでもよいです。アームカールのほうが上腕二頭筋の伸縮が大きく、筋肉の質を高める効果は高いでしょうが、ジャグリングの動きでは三角筋や広背筋など多くの筋肉を参加させることができます。
 上げ下げのリズムもあまり気にする必要はないと思いますが、ジャグリングに要求されるスピードのことを考えて、1秒で1上げ下げくらいの速めのペースを基本にするとよいでしょう。
 軽い負荷(0.5-1kg)のダンベル(重り)を使ってできるだけ速くアームカールを行うのも実践的です。この場合は、1セットあたり片腕で100-500回を目安にするとよいでしょう。ぼくも以前は、週に3回、1kgのエクサボールを両手にそれぞれもって、片腕あたり200回を5セットこなしていました。これはどちらかというと速筋のトレーニングになるのかもしれませんが、余裕をもったスローを実現するには、最大スピードを高めておくことも必要です。
 スローに直接には関わらない部位でも、疲労しやすいのであればトレーニングしておいて損はないでしょう。とくに体幹と首がトレーニングの対象となるかと思います。
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エンデュランス(1): 安定度を高めるための練習

 JJF2014ではエンデュランス競技会に参加して、5ボールカスケード、6ボールファウンテン、7ボールカスケードでそれぞれ1位を獲得しました(今年は台風のために早く会場を後にしてしまったかたが多くいらっしゃったようですが…)。JJF自体に参加できなかった2013年を除いて毎回エンデュランスには挑戦しており、2010年以降、ボールのカスケードとファウンテンについては、2011年の6ボールファウンテン以外はすべて勝利しています。
 このくらいの成績を残していれば、エンデュランスについて多少語ってもいいのではないかと思うので、エンデュランスの成績を伸ばすための練習や準備について、何回かに分けて書くつもりです。

 まず、一口にエンデュランスといっても、場合分けをして考えることが必要です。おおまかに分けると、
1. 集中力が高いときでもドロップのリスクがある、安定度の低いパターン
2. 集中力・体力が持続すれば安定して続けることができるパターン
の2つを考えることができます。ぼくの場合は5カスケードは2.で、6ファウンテンと7カスケードは1.です。
 2.の状態の人が複数いてエンデュランスを行なう場合は、ジャグリングの技術そのもの以外の部分で勝負がつくことになります。これについては記事を改めて書くことにして、今回は1.の、安定度の低いパターンをいかに安定させていくか、ということを考えて行きます。

●エンデュランスをすることはエンデュランスの練習ではない

 さて、エンデュランスの練習として一般的に行われているのは、競技会のときと同様に、ドロップするまでひたすらボールを投げ続けることのようです。そうして自己記録がたとえば100キャッチから150キャッチに増えたら、練習の成果が出てエンデュランスの能力が高くなったと見なされます。
 しかし、エンデュランスをすることがエンデュランスの練習になるとはかぎりません。ただ投げ続けることは、自分がどのくらいエンデュランスができるのかを測る指標とはなっても、エンデュランスの技術を向上させるのにふさわしいやり方ではありません。記録を伸ばすことに集中しすぎると、自分がそれまでに習得した範囲の技術しか使わないからです。

 具体的に説明してみます。たとえば、肘が伸びて前に出た状態で投げる癖がついている人が、5カスケードの技術を高めたいとします。5カスケードであれば、ある程度練習すれば、フォームが悪くてもときには100キャッチくらいは続くこともあるものです。
 問題は、この、100キャッチくらいは続いてしまうということです。最高100キャッチだったとすれば、技術的に何らの向上をしなくとも、試行を繰り返せば110キャッチくらいはすぐに出るでしょう。150キャッチを達成したとしても全く驚くことではありません。本人が自覚できていない理由のためにいい記録が出ることは、単に確率のいたずらであって、技術とはほとんど無縁のことです。肘が伸びて前に出ているという弱点があるのであれば、現状の技術の範囲から抜けだしてこの弱点を解消しなければ、根本的な上達は望めません。しかし記録は更新されているだけに、本人としては上達しているという実感をもってしまいます。だから、おそらくは何か改善すべきことがあるのだろうと疑問をいだきながらも、毎回ほとんど同じようなフォームで試行を繰り返すだけになってしまいます。そうすると、ときどき記録を更新することはあっても、決定的なステップアップはできないままです。

●エンデュランスをやめる

 この泥沼を抜け出すには、記録を狙うことをやめることが必要です。エンデュランスの練習をするために、エンデュランスをやめるのです。それで代わりにどうするかといえば、フォームそのものを改善して、理想的なものに近づけていく作業をします。

 このやり方は、いくつかありえます。一番単純に思いつくのは、誰かしら参考とするジャグラーを決めて、自分の体の動かし方をそのジャグラーの体の動かし方に近づけていく、というものでしょう。ぼく自身も、かなり長いあいだ、このやり方を続けてきました。
 しかし今は、このやり方でも弱点となるような癖から逃れることは難しいのではないか、と考えています。たしかに、ある理想形を頭に描いてそれをなぞろうとすることは、初期の段階では自分の技術の範囲を抜け出す挑戦でありえます。けれども、その理想形にある程度近づいて慣れてしまうと、結局はその慣れた動きばかりを繰り返すことになります。その動きでそのパターンを安定させることができればよいのですが、そうでなければまた行き詰まることになってしまいます。

●理想形から離れてみる

 ぼくが今採用しているのは、逆説的になりますが、理想から明らかに外れた(と思われる)フォームで練習をする、という方法です。
 ここまで述べてきたように、重要なのは、自身の技術の外側に踏み出していくことです。こういう投げ方のほうがいいのではと頭を使うことは、もちろん絶対に欠かせないことではありますが、そうやって考えたやり方で投げるだけでは、結局それまでに習得した技術の延長線上で体を動かしているにすぎません。一歩踏み出すには、自分が今思い描いている理想形のことをいったん忘れて、自分が慣れている体の動かし方もいったん封印して、とにかく自分にできない体の動かし方、自分がやったことのない体の動かし方を学んでいくことが大事です。

 たとえば、左右両手のスロー位置が重なるくらい(あるいは、むしろ右手/左手のスロー位置のほうが左手/右手のスロー位置より左/右にくるくらい)まで、スロー時に手を内側に振るフォームで練習してみるとします。最初は体がうまく動かないでしょうが、練習を繰り返すうちに、ある程度まではその動きが上達し、続けられるようになるはずです。
 さて、腕を内側へ振る動きがジャグリングにとって重要なのは言うまでもありません。しかし、ただ自分がやりやすい投げ方で練習しているだけでは、この動きに関する技術を向上させることはできないかもしれません。一方で、このように極端に腕を内側に振って投げることは、腕を振る動きのより積極的な練習となるはずです。この点で、この投げ方を試みることは、すでに習得していた技術の範囲を抜け出し、フォームを理想形に近づける手助けとなると言えるでしょう。

 このような、理想形から外れた投げ方としては、たとえば
・スロー位置を内側(外側)にする
・キャッチ位置を内側(外側)にする
・軌道を体に近づける(体から遠ざける)
・軌道の高さを上げる(下げる)
・左右の軌道の高さをずらす
など、いろいろ考えることができます。こういった投げ方を寄り道してじっくりと練習することが、結局はパターンの安定度を高めるための近道となるはずです。頭の中に思い描いている理想形は、現実の理想形ではないかもしれません。たとえそうであったとしても、実際の体の動きが頭の中の理想形と一致しているとも限りません。理想形がわからないなら、理想形を実現できないなら、とにかくいろいろな投げ方を習得することが必要です。
 もちろん、どんな投げ方でも練習して役に立つというわけではないでしょう。しかし、練習してみなければ役に立つかどうかはわかりませんし、役に立たないと思って練習しないのであれば結局何も変化がありません。役に立つかどうかといった今の自分の判断を放棄してみると、思いがけない発見があるかもしれません。

関節ごとのスロー練習

★要点

・収斂したフォームは理想的なものでなければいけない
・理想的なフォームを探すには、普段とは違う投げ方を試みることが必要
・関節ごとに練習することで、動きの自由度を高める

●動画


0:00 手を重点的に使う3カスケード。
0:16 肘を重点的に使う3カスケード。
0:32 肩を重点的に使う3カスケード。
0:55 脇にリングをはさんでの3カスケード。肘の位置が大きく動かないことの確認ができる。
1:12 脇にリングをはさんでの5ボールピルエット。
1:30 脇にリングをはさんでの7カスケード。

●理想的なフォームを実感すること

 別の場所でもたびたび書いてきたことですが、ジャグリングの技術を向上させるには、繰り返し練習することで体の動きを特定のものへと収斂させていかなければいけません。しかし、その一方で、収斂した先のフォームが理想的なものでなければ、せっかくそのフォームを覚えても、あまり意味はありません。つまり、まずは理想的なフォームがどのようなものなのかを把握しておき、それに近づくように体の動きを収斂させていくことが効率的な方法ということになります。
 けれども、理想的な投げ方は、やりたい技や体格によって変わってくるでしょう。それに、たとえ理想的な動きが映像として理解できたとしても、その動きを実現するためにどのように意識をもてばよいのかは、自分で実際に試行錯誤を積み重ねなければ分からないものです。
 さて、理想的なフォームを実感として理解するためには、逆説的に聞こえるかもしれませんが、理想的でない様々の投げ方を試みて、フォームの自由度を高めることが有効です。普段やらないような投げ方を試みることで、特定の型に収斂したフォームを、いったん忘れてしまうわけです。ここでは、特定の関節だけを重点的に使う投げ方で練習することを紹介したいと思います。

●特定の関節に重点を置いたスロー

 ジャグリングに主に用いるのは、末端から順番に、手、肘、肩の3カ所です。とりあえずはこの3つのうちのいずれかのみを重点的に用いる投げ方を試してみるとよいでしょう。
 もちろん、体幹や脚など他の部位も、軌道のコントロールには大きく影響はしませんが、勢いの付加などの形でスローに少なからず影響します。こういった要素を必要以上に大きく参加させる練習も、さらに上を目指すためには有効かもしれません。
 この練習の意義は、それぞれの関節をより柔軟に使えるようになることにあります。たとえば、初心者のうちは肩関節の動きにたよって投げている人が多いですが、この投げ方のまま練習していても、肘関節を使う技術はなかなか向上しません。そうすると、ますます肩にたよった投げ方になり、理想的な投げ方からより遠ざかってしまう、ということになりかねません。このようにならないために、最初はかなり窮屈に感じるかもしれませんが、肘関節の動きによって投げる練習をして、肘をより柔軟に使えるようにすることが大事です。もちろん、反対に肘ばかりで投げる癖がある場合は、肩で投げる練習をすることが有効になります。

 さて、各練習法についてそれぞれ少しずつ注意点を述べておきます。
 まず、手のみを使う場合。もちろん厳密には、手首や指の動きだけでジャグリングを行うことは不可能です。スロー位置とキャッチ位置に差をつけるため、手以外の関節の動きを補助的に用いなければなりません。とりあえずは、脇をしっかり締めて肘を脇腹に固定し、ボールを指で押し上げるつもりで投げると、手への負荷の割合をより高くできると思います。手の動きだけではあまり力を発揮することはできませんので、ボールを高く投げようとすると、どうしても肘などの参加割合が高くなってしまいます。したがって、軌道は最初はできる限り低くするほうがよいです。
 肘関節のみを使う場合も、脇を締め、肘を脇腹に固定します。慣れないうちは、肩関節も使ってしまい、肘が前後に大きく動いてしまうかもしれません。肩を大きく使っていないことを確認するためには、動画でもやっているように、脇にリングなどをはさんでみるとよいです。この状態では、キャッチは困難になりますが、肘関節で投げることができていれば、スローは通常時とほとんど同じ感覚で投げることができるようになります。
 肩関節のみを使う場合は、逆に、肘関節を一定の角度のままで固定するよう心がけます。結果的に肘が大きく前後に動くことになりますので、肘の位置を動かすつもりで投げてもよいかもしれません。走るときに腕を振る感覚と近いです。

サイクル法

 この「サイクル法」という名前は自分で勝手に(さきほど)作ったものですので、もしかしたら他のスポーツなどでは同様の練習方法が違う名前で採用されているかもしれません。もっとも、名前はまったく重要ではないので、どういう理由でどのような練習方法を採用するのかということだけ理解していただければと思います。

●方法

 これは、2~5種類程度の技を、1回ずつ順番に繰り返し試行するという方法です。試行と試行のあいだは、カスケードなどの基本パターンでつなげてもよいですし、いったん回収してしまっても構いません。ポイントは、同じ技を繰り返し試行しないことです。
 1つの技は、あまり多くのキャッチ数をこなさないようにします。1技あたり、キャッチ数ではせいぜい50、時間では15秒程度で完結させるのがよいと思います。

●利点

 この方法の主な利点を紹介します。第一に、惰性による成功をなくせることです。同じ技でも、最初の数試行と、しばらく同じ技の練習をつづけてからの数試行では、後者のほうが成功率が高くなるのが普通です。一度成功して感覚をつかむと、成功する体の動きを再現することが容易になるからです。
 このような繰り返しによる惰性的な成功を重ねる練習も、理想的な動きを体得するためにはもちろん必要です。しかし、最初の試行で成功できないなら、その技に必要な何らかの要素がきちんと理解・実践できていないということになるでしょう。また、たとえば人前でパフォーマンスをする場合には、まさか成功率が高まるまで同じ技を何回も繰り返すわけにはいきません。
 そこで、惰性による成功を排して、試行ごとに頭をリセットした状態で望む練習も有効だと言えます。これを行うのは簡単で、試行の合間に違う種類の技をはさめばよいです。とくに、たとえばピルエットとバッククロスといったように、系統の違いが大きければ大きいほど、思考をリセットする効果が増します。
 第二の利点として、体の動かし方が望ましくないものに固定してしまうことを予防できることがあります。さきほど述べたのとは反対に、いくら練習しても成功率が全然上がらない、それどころか繰り返せば繰り返すほど成功しにくくなってしまうということもまた、よくあることです。こうした事態は、思考や体の動きが不適切なものに偏ったまま自動化してしまうことにより起こります。その状態では、練習をつづけることが逆効果になってしまいかねません。
 このようなときは、間違った方向に積み上げてしまったものをいったん崩してしまう必要があります。そのためにも、系統の異なる技を挟むことが有効です。試行ごとに違う技を行えば、悪い方向へ動きが固定されることを予防することができます
 以上のように、同じ技を繰り返し練習することは、体の動きを自動化することにつながり、そこに異なるパターンを挟むことは、自動化をいったんリセットすることになります。よい方向への自動化であれば歓迎すべきですが、自動化がうまくいっていないようであれば、早めに見切りをつけてリセットすることが大事です。
 ただし、確実にできるパターンをサイクルに入れる場合には、惰性や自動化をうまく上達に結びつけることもできます。これが第三の利点です。
 たとえば、3ボール1アップピルエットはほぼ確実に成功する状態で、3ボール3アップピルエットを練習するとします。このとき、たとえば「522→3ボール1アップピルエット→55500→3ボール3アップピルエット」というサイクルで試行すれば、1アップピルエットの動きを3アップピルエットの動きに応用できるかもしれません。
 とくに、挑戦を始めたばかりで成功したことがないか、あるいは成功率が極端に低い技の試行をするときには、直前に同様の系統で難度がより低い技を行いリハーサルすることで、惰性により成功を引き出しやすくなります。その一方で、挑戦中の技を繰り返さないことで、体の動きがよくない仕方で固定してしまうことを防ぐこともできます。望ましい惰性は残し、望ましくない惰性は排除するよう、サイクルを決めるわけです。

●サイクルの作り方

 具体的なサイクルの作り方を少し紹介してみます。
 1サイクルに1つは、系統の大きく異る技を入れるとよいでしょう。たとえば、オーバーヘッド、アンダーザレッグ、バッククロスといったボディスローは、他の技と系統を大きく異にするので、どのようなサイクルに含めても惰性をよく排することができます。ハイアップやピルエットのように視線の大きな移動を伴う技も、思考をリセットするのに向いています。
 惰性を利用したいのであれば、軌道の高さを揃えることが有効です。ボールの数を同じにすることにはこだわらず、必要があれば少ないボール数のパターンも採用してみましょう。3ボール3アップピルエットなら、先に紹介したもののほかにも、55000や50500でのピルエットを試してみるとよいと思います。
 サイクルに含める技の個数は、練習したい技にもよりますが、ぼく自身は1サイクルの成功率が5~6割になるくらいを目安にしています。1サイクルに、成功率7割の技を2つとか、8割の技を3つといった具合です。惰性を使う場合は別ですが、成功率が9割を超える技はあまり負担がなく、思考をリセットすることにつながらないので、ふつうサイクルには含めません。

弱点にあわせた練習の構成

★要点

・何ができていないのかが分かれば効率的な練習を構成しやすい
・弱点が分からないうちはいろいろな練習方法を試してみる

●何ができないのかを把握すること

 このブログの別のところですでに述べたことですが、「ジャグリングをすること」と「ジャグリングの練習をすること」は一致するとは限りません。ジャグリングをしていても、やり方によってはそれが技術の向上につながらないかもしれません。逆に、道具を投げていなくとも、考えたり人の動きを研究したりすることで、できないことができるようになるための手がかりをえられることもあります。
 さて、単にジャグリングをするだけでなく、上達するための練習をしたいのであれば、習得したい技を見定めた上で、それを習得するためには何が足りていないのかを把握することが大切です。自分に何ができないのかが分かっていれば、その弱点を克服するにはどうすればよいかを考えることができるからです。
 ここで言っている「何ができないのか」というのは、たとえば5カスケードができないといったような技単位のことではなくて、技を細かく分析した一つひとつの要素についてのことです。一つの技でも、リズムとか、軌道の高さ・幅とか、手の高さとか、視線の方向とか、その他もろもろの要素の組み合わせによって成立します。このうちどれができていないのかを把握するのが大事だということです。

●弱点に合わせて練習方法を変化させる

 初めのうちは、こうした要素の大部分ができていないわけですから、ただ単に投げているだけでも、何かしらできない要素の改善につながります。問題が生じるのは、ある程度上達してからのことです。しばらくはテンポよく上達していたのに、あるときからふと、同じように練習していても記録が伸びなくなってしまうという経験は、ほとんどの人がおもちではないでしょうか。
 このように伸び悩んでしまう原因の一つは、上達にあわせて練習方法を変化させることに失敗してしまうことにあるように思います。特定の方法でばかり練習した場合、その方法で向上する要素があるうちは効率よく上達できますが、それらの要素を全部習得してしまえば、とたんに効率が落ちることになります。最初にうまくいけばいくほど、途中で練習方法を変更することはためらわれるかもしれませんが、行き詰まったらとりあえず練習方法を見直すほうがよいでしょう。
 たとえば、ある技を習得したいとして、その技の理想的な軌道やリズムは理解できていて、しかしスローの精度が悪いとしましょう。この弱点を自覚することができていれば、改善策を考えることもできます。たとえば、通常よりも少し高いくらいの軌道でその技をこなす練習は有効です。高く投げるほうがコントロールは難しくなるので、通常の軌道で投げるよりは、高めの軌道で投げるほうが、負荷が高くなって技術を向上させやすくなるからです。
 しかし、もしスローの精度が悪いという弱点に気づいていないとしたら、この練習方法にたどり着けないかもしれません。たどり着けずに効率的でない方法を採用しつづけたなら、同じ技を習得するにもずっと多くの時間を費やさねばならなくなってしまうでしょう。そうならないために、練習方法を決定する前には、自分に何ができていないのか、何を練習するべきなのかを把握しておくことが大事です。
 とくに心に留めておいていただきたいのは、技の習得に近づけば近づくほど、個々の要素を意識した練習が必要になるということです。すでに述べたとおり、最初はできないことのほうが多いので、どんな練習方法をとろうが技術の向上につながります。その一方で、できる要素が増えれば増えるほど、できない要素を狙って練習することは困難になります。これに気づかずにただその技をひたすら繰り返しても、あと一歩というところで完成させられないまま行き詰まってしまうことになります。逆に、その要素を狙った練習さえできていれば、極端に言えばその技自体をこなさずにその技を完成させることもできるはずです。

●弱点を見つけるために練習方法を変化させる

 ただし、何ができていないのかに自分自身で気づくのは、たいへん難しいことです。実際には、技ができるようになって初めて何ができていなかったのかに気づくこともありますし、場合によっては、できるようになっても以前悪かった点が分からないということもあるでしょう。できないことができるようになるよう練習を構成することが理想ですが、現実にはつねにこれを実践することは無理だと思います。
 そこで、次善の策として、自分の弱点が自覚できていない段階では、できるだけ多様な練習方法をこなすことを勧めます。とくに、上達しているという実感がえられず行き詰まってしまった場合には、同じ技を練習するにしても、違う仕方でアプローチをしかけることで突破口を見つけられるかもしれません。
 たとえば軌道を高く/低くするとか、1投ずつ増やしてみるとか、足を動かさないように投げるとか、歩きながら投げるとか、ボールを減らすといった方法を試してみると、予想外に難しいと感じるものに出くわすと思います。それは有効な練習方法である可能性が高いです。
 また、道具の個数を増やしていくにしても、3ボールや4ボールのパターンをあらかじめいろいろ習得しておくほうが、かえって効率よく上達できるようになります。たとえばリバースカスケードやミルズメスを練習すると、スロー/キャッチのヴァリエーションが増えて、ボールの数を増やしたときにその動きを応用できるようになります。逆に、たとえば3ボールのパターンを増やしたい場合も、ボールの個数を増やす練習をすることでスロー/キャッチの精度を高めることができるようになるはずです。
 習得したい特定の技があるとしても、それができない技である以上、それができるようになるために何が必要かを把握することは、なかなかできることではありません。しかし、自分に何ができないのかを把握することはできます。そのできないことをできることに変えることで、習得したい技の向上につながるかもしれません。また、もしそれが習得したい技の向上には結びつかなかったとしても、できることが増えたのですから、無駄ではないはずです。「何ができるようになりたいか」と同じくらいに、「何ができていないのか」を意識して練習してみてはいかがでしょうか。

練習とオリジナリティ

 オリジナリティという言葉は、ジャグリングを語る上では、他の人がやっていない技を指して用いることが多いようです。確かに、世界で一人だけしかやっていないような技であれば、オリジナルなものだという評価はとてもしやすいと言えます。
 しかし、新しい技を開発することだけがオリジナリティの発揮かといえば、そんなことはないと思います。今回は、やや抽象的な話になってしまいますが、練習をする上でのオリジナリティの役割について述べることにします。ここで練習と言っているのは、オリジナルな技の練習のことだけではありません。カスケードやファウンテンといった基本パターンも含め、ジャグリングのあらゆる技の練習を指しています。

 あらゆるスポーツに言えることでしょうが、一つの技を習得するには、愚直な反復を繰り返し、無数の失敗の中から偶然の成功を積み重ねて、成功するときの体の動きが自然に再現されるようになるまで自動化を進めていくことが必要です。反復こそが、技の習得を可能にしてくれるものです。
 しかし、同じ時間をかけて練習をしていても、上達が早い人がいれば遅い人もいます。この差の大きな部分が、才能というブラックボックスの違いによって生じることは確かでしょう。それでも、どのように練習するかによって上達の遅速が左右されることもまた、確かなことです。練習の方法ならば、才能とはある程度無関係に、考えることによってよりよいものを探すことができます。この、よりよい練習方法を模索することは、人と違う自分だけの方法を見つけること、つまりオリジナリティの発揮だと言うことができます。

 さて、一口に練習と言っても、多様な要素からなります。練習する技の種類と順番、目標、次のステップに移るタイミング、頻度・時間、場所、参考にする資料、などなど。これらの要素がすべて――あるいは、たった一つだけでも――他のジャグラーと完全に一致するということは、まずありえません。
 それでは、効率よく上達していくためには、こういった要素をどのようにして決定すればよいのでしょうか。そのためにはまず、自分に何ができて、何ができないのかを、正確に把握することが必要です。とくに、何ができないのかを把握することは大事です。上達というのは、できないことをできるようにしていくことだからです(この点については、改めて別の記事を書くことにします)。
 ジャグリングに必要な要素は無数にありますし、できる・できないにはいろいろな程度がありますから、自分と同じ個性をもつ人は他にはいないでしょう。一人ひとりで個性が異なるのなら、望ましい練習の仕方も、一人ひとりで異なるはずです。

 こうしたことを踏まえると、もうどのような答えを用意したのかお分かりかとも思いますが、最適な練習方法は、最終的にはご自身で考えていただくしかありません。
 ただし、それでは不特定の人に向けられた情報は無価値かというと、もちろんそんなはずはありません。自分のために発されたのではない情報も、最適なものではなくとも、何かしら有用なものであるかもしれません。多くの情報を仕入れて、それを取捨選択することも、オリジナリティの発揮です。
 たとえば、これまでこのブログに記してきたことは、まだ大した量ではありませんが、それでもすべてを同時に採用できるほどに少なくもないでしょうから(自分でもすべてを意識して練習できているわけではありません)、このブログのどの情報を採用し、どの情報を採用しないかによって、効用も変わってくるでしょう(すべて不採用とならないことを願います)。ネット上には映像でも文章でも、膨大な量の情報がありますし、練習会やイベントで他のジャグラーと交流することによっても貴重な情報をえることができるでしょう。それらのうち、どれを採用し、どれを採用しないかを、自分の個性と照らし合わせつつ判断することで、既存の要素から自分だけの練習方法を組み立てることができます。
 そして、さらに上に行くには、自身の経験と思考から、自分のための情報を見つけだすことです。その情報は、誰にもまねされない、技術的に卓越したオリジナリティに結びつく種かもしれません。このブログも、そのための踏み台として使ってもらえればと思います。

 ジャグリングの練習は、単調に見える反復です。しかし、それが本当にただ単調なものとなるか、それとも無数の可能性の中から熟慮のすえに導かれた信念となるのかは、オリジナリティ次第です。きっと、オリジナリティを発揮したほうが楽しいでしょう。

練習時のキャッチ数

★要点

・キャッチ数を少なく制限した練習のほうが効率的
・スタートは、難しいので練習効率が高い
・少ないキャッチ数が確実にできるならキャッチ数を増やしてもやはり確実にこなせるはず
・キャッチ数が少ないほうが改善点を意識しやすい

●少ないキャッチ数で練習を行うこと

 ジャグリングの上達を図るためには、最高キャッチ数にはあまりこだわらないほうがよいです。最高記録を伸ばすことよりは、キャッチ数を少なくおさえて回収までを確実に行う練習をすることを心がけるべきです。これは、アンソニー・ガットーやジェイソン・ガーフィールド、トニー・ダンカンなども語っていることです。ここでは、これがなぜなのかを考えていくことにします。
 ある程度経験をつめばわかることですが、ほとんどのパターンはスタートが一番むずかしいです。ここでは、カスケードやファウンテンといった基本パターンを念頭において語ることにしますが、これらもやはり最初の数投が難しいです。最高キャッチ数が増えてもスタートで失敗する確率はなかなか減らすのが困難ですし、逆にスタートがうまくいけば、しばらくはそのままきれいに投げつづけられるものです。
 キャッチ数を増やせば多くの練習をしたように思いがちですが、そんなことはありません。きれいに投げられている状態を維持することよりもきれいにスタートすることのほうが難しいのなら、スタートの練習を重点的に行なったほうが、練習の密度を高められることになります。
 もちろん、最高キャッチ数を伸ばす練習が無駄なわけではありません。しかし、最高キャッチ数を意識しすぎた場合、記録が向上すると実際以上に上達しているように感じてしまって、うまくいった場合以外はすべて失敗しているという事実を軽視してしまいがちです。そうすると、たまたまうまくいった状態を維持する練習にしかなりません。
 それより大事なのは、うまくいく状態を自覚的につくりだせるようにしていくことです。そのためには、無理に投げつづけようとせず、適当なところで回収し、スタートの練習を繰り返して、何も目印のない空中に一からボールを正確に配置していく技術を高めるほうがよいはずです。ステージでジャグリングを披露した経験がある方にはわかっていただけるかと思いますが、成功率が十分高くない技を本番で行おうとすると、最初の1投をどうすればよいのかわからず、非常に不安になることがあります。逆にスタートがうまくいく技なら、本番でも何の不安もなく投げられます。
 少ないキャッチ数の練習では、長時間投げつづける技術を高められないと思われるかもしれません。しかし、たとえば30キャッチを確実に成功させられるのなら、100キャッチだって確実に成功させられます。逆に、最高キャッチ数が100を超えても――あるいは、1000を超えても――30キャッチ未満でドロップすることがあるなら、その投げ方は理想的なものとは言えません。経験から言えば、たとえば5ボールカスケードなら、あまり望ましい投げ方でなくとも、試行を繰り返せば運次第で1000キャッチを超えることも十分ありえます。
 それに、スタートでボールを正確に空中に配置することができるようになれば、持続的に投げる場合にミスを修正することも容易になります。スタートとミス修正は、ほとんど同じ技術です。
 また、キャッチ数を少なく制限したほうが、改善点をよりよく意識した練習ができます。改善すべき点があるとして、それを意識しつつ投げ始めたとしても、限界まで挑戦しようとすると、どうしても、ミスの修正やキャッチ数が今どのくらいかといった別のことに気を取られてしまいがちです。それでは効率のよい練習だとは言えません。二兎を追うとかえって一兎も得られないので、特定の課題があるならそれを第一に置くべきです。
 ただし、ある程度上達したら、パターンによっては自分の最高キャッチ数を把握しておくことも重要になります。たとえば5カスケードなら、30キャッチをほぼ確実に成功させられるようになったとしても、200キャッチとか300キャッチで疲れを感じるようなら、その投げ方は、無駄に力の入った、理想的とは言えないものだとわかります。そうであれば、やはり投げ方を改善することが必要になります。このように、長時間投げられることも理想的なフォームの条件ですから、ときには限界まで挑戦して、どの程度の時間でどの程度の疲労を感じるのかを確認するべきです。

●キャッチ数を意識した練習のステップ

 それでは、具体的な練習ではどうなるのかを紹介します。ここで述べる方法はあくまで目安ですから、自身の感覚に合わせてやり方を工夫してみてください。
 まず、練習を始めたばかりで、最初の数スローもままならない段階では、とりあえずフラッシュの成功率を5~9割程度まで高めることを目標にしましょう。このように幅をもたせたのは、パターンによって次に進むべきタイミングが異なるからです。難度の低いパターンは成功率をかなり高めてから次のステップに進んだほうがよいですし、難度の高いパターンならあまり成功率が上がらなくとも次のステップに進んだほうがよいです。4ファウンテンなら8~9割、5カスケードなら7~8割、6ファウンテンなら5~6割、といったところでしょうか。これは、難度の高いものほど、キャッチ数が少なすぎても理想的な投げ方を見つけにくいからです。
 フラッシュがある程度できるようになったら、次のステップとして、キャッチ数を少しずつ増やし、クオリファイ(ボールの数×2キャッチ)を目指しましょう。クオリファイまでは、成功率が5割もあれば、キャッチ数をどんどん増やしていってよいと思います。クオリファイへの挑戦を始めたら、成功率をやはり5~9割程度まで高めることを目標にします。
 クオリファイがうまくいく確率が上がってきたら、うまくいけばそのまましばらく投げつづけられることもあるかと思います。とりあえずは、20~40キャッチで回収まできれいに行うことを目標にします。30キャッチということをこれまで何度か書いてきましたが、これは個人的に丁度よいかなと感じているキャッチ数(正確には、2の冪数が好きなので、2^5=32キャッチなのですが)で、たとえば20キャッチだと少なく感じますし、40キャッチだと無駄に多いと感じます。これは個人差があると思うので、自身のよいと感じるところで止めればよいです。このくらいのキャッチ数で練習を行うのが、もっとも効率がよいと思います。
 最後に付け加えておきますが、試行を行うたびに、その試行の反省をすることを忘れないようにしていただきたいと思います。成功したならなぜ成功したのか、もっとうまく成功させるにはどうすればよいか、失敗したならなぜ失敗したのか、成功させるにはどうすればよいかと、きちんと考えます。どのような点に気をつけるべきかは他の記事を参照していただきたいのですが、こうした具体的な練習方法を採用するときほど、形式に気を使うあまり一回ごとの試行への意識が薄くなりがちなので、あえて注意を書かせていただきました。
プロフィール

mascaret

Author:mascaret
福岡出身・東京&千葉&フランス経由、千葉在住のジャグラーです。

*経歴
JJF2014にて
 エンデュランス
  5ボールカスケード1位
  6ボールファウンテン1位
  7ボールカスケード1位
JJF2012にて
 チャンピオンシップ決勝進出(2年連続)
 エンデュランス
  5ボールカスケード1位
  6ボールファウンテン1位
  7ボールカスケード1位

*使用道具
ボール:RF Beanbag M (Rad Factor), Elite 8 M (Gballz) etc.
クラブ:PX3 SIRIUS TRAINING (Play)
リング:Absolute Circus Ring (Absolute Circus), Wind Stream Ring (Mr. Babache), SATURN (Play)

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